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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)4381号 判決

主文

原判決及び第一審各判決を破棄する。

本件を高知地方裁判所に差戻す。

理由

高松高等検察庁検事長市川季熊の上告趣意並びに被告人和田栄治弁護人田万清臣、同渡辺綱雄、同中村蓋世及び被告人中村政芳弁護人甘粕勇雄の各答弁はいずれも末尾添付の別紙書面記載のとおりであって、これに対し当裁判所は次ぎのように判断する。

「経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律」二条が、同条の定める会社、組合またはこれらに準ずるものについて、その事業または業務を限定するところにかんがみるときは、同条にいう役職員の職務とは、その職務であれば右にいう事業または業務にかかわりなく、すべてを含むと解すべきでないこというまでもないが、他面、立法の趣旨がこれらの事業または業務の公共的性質に主眼をおくことを考え合わせると、これを厳に本来の独占的または統制的性質をもつ事務に局限すべきでなく、本来の事業または業務を行うために必要な関係にある事務をも含むものと解するのを相当とする。本件土佐電気鉄道株式会社が右法律二条別表乙号三〇にいう「地方鉄道法第十二条ノ規定ニ依ル免許ヲ受ケ地方鉄道業ヲ営ム者」である以上、同会社が線路の一部を電化するに当り、その架線工事を請負わせることは、その会社の本来の事業たる運輸事業自体とはいえないが、これを行うために必要な関係にある事務であること明らかである。従って右会社の役職員がこのような事務を担当している場合には、その事務は右法律二条のいう職務に当るものと解しなければならない。さすれば、原判決がこれを同条の職務に当らないとして、被告人等に対し無罪の言渡をした第一審の各判決を支持したのは、法令の解釈を誤った違法があり、結局、論旨は理由があるに帰する。

よって、刑訴四一〇条一項本文四一三条本文に則り、原判決及び第一審各判決を破棄し、本件を第一審裁判所に差戻すこととし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)

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